| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-087 (Poster presentation)

ハワイフトモモにおける葉トライコームの適応的意義-光合成・水利用に注目して-

*甘田岳, 小野田雄介(京大・農・森林生態), 市栄智明(高知大・農), 北山兼弘(京大・農・森林生態)

ハワイフトモモはハワイ島の優占種であり、大きな環境傾度に沿って、非常に多様な葉形質をしめす。特に、トライコーム(葉毛)の変異は顕著で、乾燥する標高ほどトライコームは多くなる。同所的にもトライコームの有る個体と無い個体が共存する。本研究では、トライコームの適応的意義を明らかにするために、ハワイ島マウナロア山における(1)標高1200mの集団内と(2)異なる標高(100m、1280m、2400m)の集団間において、トライコーム量の違いに伴って、水利用効率や光合成速度などの個葉特性や、シュートレベルの形質がどう変化するのかを調べた。標高1200mの集団内においては、無毛個体が存在する一方、有毛個体は葉重量の23%を占めるトライコーム量をもっていた。しかし、有毛個体のトライコームによる蒸散抑制は、気孔や境界層抵抗を含めた全抵抗の2%と小さかった。光合成水利用効率に有毛と無毛個体間で差はなかったが、有毛個体の葉面積当りの窒素量は多く、最大光合成速度が高かった。またシュートレベルでは有毛個体で茎断面積当りの葉面積が小さく、乾燥適応が示唆された。標高間比較では、トライコーム量は高標高で132、中標高で35、低標高で19g m-2であった。トライコームによる蒸散抑制効果は、最大でも全抵抗の8%程であった。他の形質に関しては、高標高では葉面積当りの葉窒素量が多く最大光合成速度は高い一方で、窒素当りのルビスコ量は低く、光合成窒素利用効率は低かった。シュートレベルでは高標高ほど茎断面積当りの葉面積は小さかった。以上の結果より、トライコームによる蒸散抑制は限定的であるが、トライコームの増加に伴った個葉特性やシュートレベルでの変化により、乾燥耐性が高くなると考えられた。


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