| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-095 (Poster presentation)
植物の師管液には、スクロース等の光合成産物が含まれているが、植物の生育環境との相関関係やシグナル伝達のメカニズムを知る上で、この師管液の採取・成分分析が必須である。また、植物の細菌・ウイルスに関する研究等においても、師管液の採取・成分分析が、極めて重要となっている。
従来、師管液の代表的な採取方法としては、植物の茎を切断して採取する(1)EDTA法と、師管液を餌とする吸汁昆虫の性質を利用した(2)レーザスタイレクトミー法がある。EDTA法は、茎を切断するため、他の組織液の混入により、師管液の純度が低下するという本質的な課題がある。一方、レーザスタイレクトミー法では、吸汁昆虫の口針切断を行うためレーザを必要とし、採取の成否も昆虫の食性や吸汁能力に依存すること、更に液の乾燥や採取の再現性が悪いという問題がある。このように、師管液の採取を、簡便、かつ非破壊で行なうことができ、高純度な師管液を長期間安定に採取する方法は、未だ確立されていない。
本研究では、このような状況を鑑み、半導体微細加工技術を応用したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を駆使して、農業分野で汎用的に用いられる師管液の採取・成分分析用のマイクロデバイスを提案した。
提案したマイクロデバイスは、師管液を採取する際、維管束(道管/師管位置)の特定を行うセンサ類、液を採取する中空針、採取後の液を貯蔵するリザーバ等から構成される。現在までに、センサ付きの中空針やリザーバ等を備えたデバイスのプロトタイプ試作に、ほぼ見通しが立った。当日は、擬似植物実験系を用いた液の採取に関する基本実験結果を報告する予定である。