| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-096 (Poster presentation)
枯草菌や納豆菌などのバクテリアは栄養を含んだ寒天培地に接種すると表面で成長、分裂を繰り返してコロニーを形成する。このコロニーのサイズや空間パターンは、培地の環境条件に依存する。培地の栄養濃度は増殖率に影響し、寒天濃度は栄養の拡散に影響する。
一方、道路や建物などの建設による生息地の破壊が生物の種の存続に影響を与えており、生物種の存続や侵入の問題は極めて重要なトピックとなっている。最近、生物の分布拡大モデルにおいても生息地に不適な環境を設置するなどの方法で生物分布拡大パターンを解析する研究が報告されている。
本研究では枯草菌(Bacillus subtilis)と細菌学的性質が同一である納豆菌(Bacillus subtilis natto)を用い、培地を部分的に破壊することで、破壊された生息地(破壊地)が納豆菌コロニーの空間パターン形成にどのような影響を与えるかを培養実験によって解析した。その結果、破壊地が無い場合と比較すると破壊地がある場合はコロニーサイズが縮小するが、栄養条件によっては逆にサイズが拡大する場合があることも分かった。また、納豆菌のコロニーが破壊地に接触していなくてもコロニー縮小の効果が表れていることから、コロニー縮小は破壊地が障壁となってその先へと進めない等の直接的な増殖阻害だけでなくその他の効果によってコロニーに影響を与えていると考えられる。そこで、生息地の破壊がコロニー面積の拡大、縮小に影響する理由や納豆菌が破壊地に接触していなくてもその変化が起こる理由を明らかにするために、生息地破壊を組み込んだ二次元格子モデルを構築しシミュレーションによって解析を行った。発表ではシミュレーション解析結果も合わせて報告する。