| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-098 (Poster presentation)
細菌は水域生態系において有機物の分解と無機化を通じて物質循環を駆動している。細菌は種間で異なる代謝様式を持つため、群集組成の解析は細菌の機能の推定につながると考えられてきた。淡水生態系には河川や湖が含まれるが、河川と湖では細菌を取り巻く環境が異なる。河川は栄養塩濃度が高く、底層や陸域から移入による撹乱が大きい。一方、湖は栄養塩濃度が低く、比較的安定した環境である。淡水生態系の機能を理解するためには、河川から湖にかけての水平方向の異質性を理解することが重要である。さらに、細菌群集の組成に影響をあたえる栄養塩濃度等の環境要因は季節により変動するため、年間を通じた調査が必要とされている。
本研究では琵琶湖と琵琶湖に流入する最大の河川である野洲川を調査地とし、月に一度、一年間にわたり採水を行った。環境条件として溶存態窒素・リン・炭素の濃度を測定した。細菌の群集組成は試水を粒子付着画分(>5 µm)と浮遊画分(0.2~5 µm)に分画し、次世代シークエンサーを用いて解析した。
溶存態窒素及びリンの濃度は河川が湖にかけて高く、溶存態炭素の濃度は河川から湖沼にかけて有意な差はなかった。細菌群集組成は粒子付着画分においてはCyanobacteriaが河川から湖にかけて優占した。浮遊画分においては、河川ではBacteroidetesとBetaproteobacteriaが湖ではActinobacteriaとAlphaproteobacteriaが優占した。優占する細菌の傾向は年間を通じて変わらなかった。統計解析により、溶存態窒素、及びリンの濃度が細菌の群集組成に影響を与えることが明らかになった。先行研究から河川で優占した細菌は富栄養や撹乱の大きい環境に、湖で優占した細菌は安定した環境に適した生理特性を持つことが知られている。このことは、環境条件が細菌群集を決定している可能性を示唆した。