| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-100 (Poster presentation)
キシノウエトタテグモはトタテグモ科に属する地中性のクモである。一方、クモタケは子囊菌門バッカクキン科に属する昆虫寄生菌であり、国内では主にキシノウエトタテグモなどのクモ類に寄生する。キシノウエトタテグモとクモタケの相互関係についての研究は少なく、キシノウエトタテグモの個体数変動とクモタケの感染率との関係は未だ不明である。また、キシノウエトタテグモ群集におけるクモタケの感染率については、これまでに近畿地方での研究があるのみであり、関東地方での報告例はない。さらに、宿主の体の大きさとクモタケの感染率を比較した報告例もない。そこで本研究では、関東地方のキシノウエトタテグモ群集におけるクモタケの感染率を明らかにすることと、宿主の体の大きさと感染率との関係を明らかにすることを目的とした。千葉県佐倉市、茨城県つくば市、茨城県土浦市の3か所にそれぞれ2つの調査区を設定し、2014年6月から9月末まで毎月2~4回の野外調査を行い、調査区ごとの生存個体と感染個体の数よりクモタケの感染率を求めた。また、宿主の体の大きさを示す指標として巣穴の直径を用い、各調査区で確認された巣穴の直径をすべて計測し、計測値を5つの階層に分けて階層ごとの感染率を比較した。クモタケの感染率が最も高かった調査地は佐倉であった。また、巣穴の直径が11~15mmの階層での感染率が最も高かった。さらに、宿主の巣穴の直径が大きくなるにつれてクモタケの感染率も高くなる傾向が認められたことから、クモタケは直径の大きな巣穴を形成する個体に感染しやすい可能性が示唆された。以上のことから、キシノウエトタテグモ群集において、クモタケの感染率は巣穴周辺の環境条件や宿主の体の大きさによって変動すると考えられる。