| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-102 (Poster presentation)

東日本に分布するヒメクロオトシブミの揺籃形成による葉の内生菌相の変化

*大橋謙太郎(山形大・院・理工),横山潤(山形大・理・生物)

昆虫と植物、菌類の三者間の相互作用は、生物群集の構造や生物多様性を理解する上で重要である。植物体内に存在する内生菌は、虫こぶ形成や潜葉する植食性昆虫と植物とのかかわりに変化を引き起こすことで、相互作用に影響を及ぼすことが知られている。植食性昆虫の一群であるオトシブミ類は、幼虫が成虫に育つまでの餌であり住処となる揺籃とよばれる葉巻を作成する。Euops属では親成虫がPenicillium属の菌を保持し、揺籃作成に能動的に菌類を利用しているが、菌を貯める外部形態をもっている種はEurops属でしか知られていないため、他のオトシブミ科昆虫と菌類とのかかわりはほとんど調べられていない。 本研究では、ヒメクロオトシブミApoderus erythrogasterの揺籃形成の有無による葉の菌類相の違いから、揺籃形成と関連した菌類相の変化について調べた。

ヒメクロオトシブミは本州、九州、四国に分布する、国内のオトシブミの最頻出種の一つとして知られており、地域ごとに異なる体色タイプが存在する。また、寄主として利用する植物の種数が多く、ジェネラリスト的な性質をもつ種である。

調査地には黒色と赤褐色の2つの異なる体色タイプが存在し、主にヤマツツジ、コナラ、ヤマハギなどを利用していた。

茨城県と秋田県では、揺籃と周辺葉の間で単離される菌の種相が異なっていた。茨城県ではヤマツツジとコナラの揺籃からPestalotiopsis属の菌が多く単離された。秋田県では、ヤマハギの揺籃から昆虫による持ち込みが疑われるPenicillium属の菌も単離され、揺籃の作成の有無によらずCladosporium属の菌が多く単離された。

今回の発表では福島県のヤマツツジ、山形県のヤマハギから得られた内生菌のデータを加え、地域間の内生菌の種相の違いについても比較する。


日本生態学会