| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-106 (Poster presentation)
外生菌根(ECM)菌の伸ばす根外菌糸形態は、ECM菌の生態をよく表す器官である。長さや分化度合をもとに複数のタイプに分類することができる。菌糸形態同士はその菌糸体量も大きく異なる。菌糸体量および根外菌糸形態と宿主の光合成量には密接な関係があると予想される。しかし、林の発達に伴う光合成生産量の推移とECM菌の根外菌糸形態の関係についての議論は少ない。本発表では、既存研究データを解析することにより、林分の発達に伴う根外菌糸形態の推移を議論する。各根外菌形態の基礎的な理解のため形態的・生態的特性(遷移段階、極性、genetサイズ等)を菌属ごとにまとめ、林の発達に伴って変化すると考えられる林齢、土壌層位、土壌中窒素濃度、樹木密度等に関して各菌属の感染傾向の違いを主に解析した。今回扱う根外菌糸形態は菌鞘からの射出菌糸形態より、菌糸をほとんど伸ばさないタイプ(C)、細く短い菌糸を伸ばすタイプ(SD)、根性菌糸束も菌鞘も滑らかなタイプ(MDS)、房状に多く分岐する根性菌糸束を持つタイプ(MDF)、最も分化した太く長い根性菌糸束を持つタイプ(LD)とした。
比較的有機質な土壌層では、C、SD、MDFが有為に多く、MDSとLDははっきりとした傾向がみられなかった。立木密度が低い環境ではLDが多く、密度が高いとCとMDFが多くなった。これらと林齢、窒素濃度の結果から、林の発達の初期においてはSDやLDが多く、最も純一次生産量が高いと思われる林冠閉鎖前後に根性菌糸束タイプの感染量のピークを迎え、成熟した林ではCとMDFが優占するようになる傾向が得られた。この結果から、菌糸形態と繁殖戦略について、攪乱耐性・競争耐性・ストレス耐性の観点から、各菌糸形態型の胞子散布能力・菌糸感染能力・基質分解能力について概念図を作成し議論する。