| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-108 (Poster presentation)
リンゴ栽培では,病原菌感染による落葉被害を防ぐため,農薬散布が必須である。しかし,自然栽培(無肥料・無農薬)で管理されるリンゴ園では,農薬を散布せずにリンゴの落葉被害の抑制に成功している。落葉は,褐斑病菌(Diplocarpon mali Harada et Sawamura)が葉へ感染し広がることで主に引き起こされる。本研究は,この自然栽培リンゴ園で見られる病害抑制メカニズムについて,葉の内生菌の存在がリンゴ樹の耐病性の強化に関わるという仮説を検証した。
青森県,岩手県にある自然栽培リンゴ園7園を対象とし,9月の落葉率と葉の内生菌(真菌,細菌)群集の違いをDNAを用いた分子生態学的手法で調べた。9月末に各リンゴ園の個体の落葉率を調べ,その個体の葉からDNAを抽出し,特異的なプライマーを用いてリアルタイムPCRとT-RFLP法で内生菌(真菌と細菌)の量と群集構造を調べた。
9月の落葉率および葉の内生真菌量,細菌量は,リンゴ園間で有意に異なった。また,落葉率は,9月の内生細菌量と有意ではないが負の相関が,真菌量とは有意な負の相関が認められた。さらに,各内生菌種の量に関して,T-RFLPで検出,同定(18SrRNA,ITS領域)された真菌4種が落葉率と有意な負の相関を示した。これらの結果は,葉の中の特定の内生真菌量が多いリンゴ園ほど落葉が抑えられることを示している。