| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-111 (Poster presentation)
福島原発事故後から行われた食品中の放射性物質検査によって、ウコギ科の落葉高木であり、山菜として利用されるコシアブラが高濃度に放射性セシウム(Cs: 134Cs+137Cs)を集積していることが明らかとなった。本研究では、コシアブラの根系に定着するアーバスキュラー菌根菌(AM菌)に注目し、この菌とコシアブラの特異的なCs集積能力との関係を明らかにすることを目的とした。2014年5、8、9月に福島県川俣町山木屋地区の二次林に生育するコシアブラの実生を採取した。その後、根系の放射能分布をオートラジオグラフ測定によって明らかにし、放射能が高い細根・低い細根を対象にAM菌の感染率を求め、各細根の放射能とAM菌の感染率との関係を調べた。本研究では、AM菌の感染率の新しい評価手法として、画像処理ソフト「WinRhizo」を使った手法を用いた。「WinRhizo」では、染色した細根の顕微鏡写真から菌体を色によって判別し、細根中に占める菌体の面積を算出することが可能であり、本研究ではこれにもとづいてAM菌の感染率を算出した。その結果、放射能が高い細根のほとんどにおいてAM菌の感染率が高いことが明らかとなった。この「WinRhizo」法の検証のため、グリッドインターセクション法にもとづいた方法での評価も同時に行い、両手法によって得られた感染率の比較を行った。この結果、両者間の決定係数は0.87となり、「WinRhizo」 法の信頼性 が示された。この手法は、従来の目視による評価手法と比較して短い時間かつ少ない労力で評価を行うことができ、さらに顕微鏡写真全体という広い範囲を評価対象とすることができるという利点をもつことから、簡便なAM菌評価法として有効である。