| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-005 (Poster presentation)

伊豆半島東海岸の海岸植物群落の構成要素

田中徳久(神奈川県博)

伊豆半島における海岸植物群落の構成種の生態要素を解明することを目的として、植物社会学的な植生調査を実施した。ここでは、東海岸での調査資料により、その構成種の生態要素のうち、外来・在来の別や本来の生育環境について報告する。

本研究では、得られた164個の植生調査資料のうち、森林群落(低木林を含む)や漁港の舗装の隙間などの植分の調査資料を除いた144個の資料を使用した。これらの資料には158分類群が出現したが、ここでは出現した分類群の特性のみに着目した結果を報告し、植生単位区分やそれに関連した解析は別に発表の予定である。

出現した158分類群のうち、在来植物は117分類群、外来植物は41分類群で、帰化率は26.0%であった。この帰化率は、2001年の神奈川県の帰化率とほぼ等しい。

在来植物においては、海岸を主たる生育環境とする植物(以下海岸植物と表記)が54分類群、路傍や路上を主たる生育環境とする植物(路傍植物)、マント群落を構成するつる植物(マント植物)がそれぞれ15分類群、淡水に涵養される湿性地を主たる生育環境とする植物(湿生植物)が8分類群であった。湿生植物は、海岸に流入する水路や海崖下に沁みだす湧水などに涵養される立地に出現した。今回の調査では、レッドデータ植物に選定されているような分類群は記録されなかったが、低標高域の湿性地は貴重なものになっており、海岸の生育地は重要であると言える。なお、帰化植物の中でもアメリカタカサブロウやメリケンガヤツリは湿生植物である。

海岸の植物群落に出現する在来植物において、路傍植物やマント植物が多いことは、帰化率の高さとともに、海岸の植物群落に人為的な影響が大きく及んでいることを示している。ただし、古い調査資料にも、これらの混生は皆無ではないので、構成種の変遷については、さらに比較・検討が必要である。

なお、本研究は、新技術開発財団の第23回植物研究助成によるものである。


日本生態学会