| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-008 (Poster presentation)
倒木は森林内の生物多様性や物質循環と密接な関わり合いを持つことから、その空間分布情報は例えば森林内の動物・昆虫の分布や炭素・窒素循環機能を評価するための基礎的な生態系情報の一つとして重要である。しかしながら、地上観測によって倒木の分布情報を取得することは多大な時間と労力を必要とする。そこで本研究では、森林内の倒木の空間分布状況を低労力で確認可能な新たな手法として、UAV(無人航空機)の高解像度空撮画像の利用に着目した。
2011年11月に落葉広葉樹林(茨城県・小川試験地)内の検証サイト(6ha)を対象に、GPSとデジタルカメラを搭載した無人ヘリコプターによる空撮を行った。そして、地上観測によって取得した倒木の分布情報と、空撮画像から目視によって検出した倒木の分布情報との対応関係を検証した。
その結果、直径30cm以上または長さ10m以上の倒木の検出率は約90–80%であった。しかし、直径や長さがそれ未満の倒木の検出率は約30–0%であった。以上の結果は、低コストかつ低労力な生態系観測を実現する手法としてのUAV観測の有用性と課題点を明らかにした[1]。
(本研究は環境省・環境研究総合推進費S9「アジア規模での生物多様性観測・評価・予測に関する総合研究」の支援を受け実施された。)
[1] Inoue T, et al. (2014) Unmanned Aerial Survey of Fallen Trees in a Deciduous Broadleaved Forest in Eastern Japan. PLoS ONE 9(10): e109881.