| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-009 (Poster presentation)
ニホンジカによる植生への摂食が近年顕著になりつつある南アルプス北岳亜高山帯において、その影響の変化を定量的に把握した。調査は、標高2200~2800mまでの通称右俣および草すべりの登山道沿いでダケカンバ林および高茎草原を対象とした。登山道沿いの約30mおきに長さ20mの調査区を設定し(ダケカンバ林16調査区、高茎草原26調査区)、登山道の両側に5m間隔で1×1mの植生調査区を設置した(1調査区あたり10植生調査区。合計420植生調査区)。各植生調査区に出現した植生高2m以下の維管束植物種を記録し、ニホンジカによる被食の有無も記録した。この調査を2010年および2014年に実施した。被食率(各調査区の全出現種の出現頻度に占める被食されていた種の出現頻度の割合)は、2010年にはダケカンバ林が高茎草原よりも高かったが、2014年にはほぼ同様であった。両植生タイプとも被食率は2010年から2014年にかけて低下していた。種多様度(H’、J’、単位面積あたりの種数)は、それぞれダケカンバ林で高かったが、2010年から2014年にかけて低下していた。一方、高茎草原では上昇していた。また、被食率が高い調査区では、種多様度は低下しており、その傾向は、2010年よりも2014年度で顕著であった。被食率の低下していた調査区の種多様度は、高茎草原では上昇していた調査区が多いものの、ダケカンバ林では低下していた。それは、ダケカンバ林では、ニホンジカの摂食の不嗜好性種の出現頻度が増加していたことを示唆している。