| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-011 (Poster presentation)
2011年に噴火した霧島山系新燃岳周辺では風下を中心に植生被害が確認されている.一方で,当地域は従来からシカが高密度で生息しており,食害による植生回復への影響が懸念されている.そこで本研究では,現地のアカマツ林において火山噴火後の植生回復に及ぼす堆積火山噴出物とシカ食害の効果を野外操作実験で検証した.火口に近い場所(火山噴出物堆積深20cm)と遠い場所(同3cm)でシカ排除柵を設置し,その内外で1平方mの方形区を各48個設け,それぞれ半数の方形区で堆積した火山噴出物を除去した.植生回復過程は2年間(2013~2014年)観察した.その結果,いずれの区でも噴火後に種数・植被率とも増加しており,植生は回復しつつあることが確認された.火山噴出物の影響は火口に近い場所で強く見られ,排除区の種数及び植被率増加は対照区の増加よりそれぞれ24.0%,305.5%大きかったが,火口から遠い場所では種数110.2%,植被率-78.6%と火山噴出物排除の効果ははっきりしなかった.一方,火口からの距離に関係なくシカ排除区での種数・植被率の増加は大きく,火口から近い場所で種数56.2%,植被率108.6%,火口から遠い場所で種数81.5%,植被率501.3%対照区より増加が大きかった.火口から遠い場所の方がシカ排除効果が高くなったのは,火口から近い場所よりシカの個体群密度が高いためと考えられた.また,2箇所ともシカ食害効果が確認されたことは,火山噴火の影響が局所的であるのに対してシカ食害は広域的に植生に影響することを示唆している.火口から近い場所では一時的にシカの個体群密度が低下しているが,植生回復に従い戻ってくると予想されることから,シカ食害の影響が更に強くなるかもしれない.