| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-013 (Poster presentation)

高知県中部におけるアオモジの分布

*比嘉基紀,細川正記,石川愼吾(高知大・理)

アオモジ(Litsea cubeba)は。薩南諸島から九州南部、西部、北部、山口県、岡山県、奈良県に分布し、九州東部には見られない九州西廻り型の分布を示すクスノキ科の落葉小高木植物である。本種は、主に耕作放棄地や林縁、伐採跡地などの陽地に生育する。近年、中国地方や近畿、東海、関東地方において、植栽木からの逸出と考えられる個体の分布拡大が確認されている。在来種であっても本来の自生地以外での分布域の拡大は、定着地周辺の植生に影響を及ぼす可能性がある。そこで本研究では、現在アオモジの逸出が確認されている高知市とその周辺地域において、アオモジの分布と生育環境の調査を行い、アオモジの分布拡大が周辺植生に及ぼす影響について検討を行った。高知市と土佐市において3次メッシュを用いて分布調査を行った結果、調査を行った36メッシュ中22メッシュで本種の生育が確認された。多くの個体が確認されたメッシュの一つで詳細な分布調査行った結果、28地点で生育が確認された。生育環境は、宅地や果樹園、棚田の周辺のほか二次林や竹林の林縁、造成地など、人間が植栽したと考えられるような場所以外でも分布が確認された。ススキやネザサ、トダシバ、シラヤマギク、オミナエシなどが生育する半自然草地でも調査を行った結果、15地点で生育が確認された。毎木調査を行った結果、胸高直径5 cm以下の個体が多かった。以上のことから、高知県中部でも他の地域で確認されているようにアオモジは宅地や里地、半自然草地で分布域を拡大している可能性があること、半自然草地では本種の分布拡大によって草原生植物の多様性が低下する可能性があることが示唆された。


日本生態学会