| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-014 (Poster presentation)

耐陰性の等しい樹種間における葉層分割

*鈴木牧, Olga Orman (東大・新領域), 正木隆(森林総研)

樹木群集における種多様性は従来おもに遷移系列上のニッチ分化によって説明されてきたが(遷移ニッチ仮説),近年,高さ方向の密度分布に基づくニッチ分化による説明(葉層分割仮説)が新たに提案された。葉層分割は耐陰性の差異が不明瞭な樹種間の共存を説明する事が期待できるが,林冠構造の比較的単純な温帯林での重要性は低いとの見方がある。今回,従来は遷移ニッチ仮説から多種共存の説明が試みられてきた,森林総研小川学術参考林の1997年から2013年までの毎木調査データ(DBH > 5cm)および,このサイトにおける各樹種の繁殖開始サイズの既往データを解析し,葉層分割仮説の前提となる生活史パラメタのトレードオフがみられるかを検討した。各樹種の新規加入率と,繁殖開始までの推定所要時間には,負の相関があった。一方,繁殖開始までの所要時間と繁殖開始サイズにおける生存率には正の相関がみられた。すなわち,繁殖開始の遅い種は,加入率が低く,繁殖ステージ到達後の生存期間が長いと考えられた。これらの関係は,遷移ニッチ仮説より葉層分割仮説の想定により近く,本サイトにおける葉層分割の存在を示唆した。同様の傾向は,耐陰性が高いとされる高木種間だけでもみられたことから,これら樹種間の共存に葉層分割が寄与している可能性が示唆された。一見,林冠構造の単純な温帯林においても,生活史パラメタのサイズ依存性の違いによって葉層分割が作用し,種間共存に寄与する場合がある。


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