| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-015 (Poster presentation)
常緑広葉樹が優占する熱帯雨林でも、高標高や貧栄養な立地では球果類(いわゆる針葉樹)が多く混生する。キナバル山の異なる標高・地質に設置された調査区でも同様の傾向がみられ、球果類のサイズ構造をみると、堆積岩地では一山型、貧栄養な蛇紋岩地では逆J字型と、更新様式が地質によって異なることが示された。なぜ、球果類は貧栄養立地では連続更新が可能になるのだろうか?本研究では、球果類の実生(樹高30cm未満)と稚樹(樹高30cm以上、直径5cm未満)の更新状況を把握するために、キナバル山の標高700、1700、2700、3100mのそれぞれ堆積岩と蛇紋岩(標高1700mにはさらに2タイプの地質)に設置された計10地点の調査区内に実生調査区(1×1m2)と稚樹調査区(2×2m2)を規則的に20個(標高700mでは25個)設置し、その個体数をカウントした。また、球果類の生育に重要な光条件を把握するために、全天写真を撮影し、光合成有効放射(PAR)を推定した。その結果、球果類の実生・稚樹数は、標高1700m以上で多く、地質間では蛇紋岩地で多かった。PARも同様に高標高および蛇紋岩地で高い傾向がみられた。パス解析の結果、土壌養分(無機リンおよび窒素含有量)の実生・稚樹数への直接効果よりもPARを介した間接効果の方が大きいことが示された。林床の光条件は植生に影響され、植生は土壌養分によって変化する。以上のことから、貧栄養で樹木にとって厳しいはずの蛇紋岩地で球果類が連続更新するのは、植生の変化に伴い林床の光条件が改善することで、後継樹を確保しやすくなることが1つの要因と考えられる。