| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-023 (Poster presentation)

岩手県沿岸の植生―大津波の影響による変化(5)

*竹原明秀(岩手大・人文社会),小水内正明,湯浅俊行,大上幹彦

2011年3月11日に発生した東日本大震災により,沿岸地域の自然環境や生物相に多大な影響を及ぼした。特に大津波による市街地や農地の破壊的変化はそれまでに生活していた生物相を改変するとともに,新たな生物相の出現というダイナミックな変化も現れた。さらに,現在進行している復旧事業による環境攪乱は沿岸地域の生物相や植生に多大な変化をもたらしている。ここでは岩手県沿岸の植生を明らかにする研究の一つとして,大津波が到達した地域での微地形の違いによる植生の違いをまとめることとした。

植生調査データは岩手県宮古市内の複数の自然海岸(構造物はほぼなく,砂浜や礫浜からなる小規模な内湾の海岸)で調査したもの(主に2012・2013年)を使用した。

本研究では,海岸の微地形を海浜地,後背地,デブリ,斜面下部,海崖に大きく分けた。それぞれに出現する植物(特に津波後に出現した植物)は次の通りであった。海浜地:ヨモギ,エノコログサ,メヒシバ,シロザ。後背地:ヨモギ,アレチマツヨイグサ,へラオオバコ,マメグンバイナズナ。デブリ:タケニグサ,オカトラノオ,タラノキ,サンショウ。斜面下部:アキタブキ,モミジイチゴ,ヤクシソウ,クサノオウ。海崖:ラテイタソウ,ゼンテイカ,ハマギク。これら以外にも後背地やデブリには海浜植物(ハマエンドウ,ナミキソウなど)が一時的に出現した。特に津波による攪乱(土砂の移動と再堆積,倒木など)による裸地には短命生の雑草や帰化植物が多く,徐々に多年生雑草が増加した。さらにデブリや斜面下部ではタラノキやサンショウ,ケヤマハンノキなどの先駆種が高い頻度で出現し,元の森林植生へと遷移が進行していた。これらの結果から,大津波による攪乱後に成立した植物群落も微地形の違いを反映していた。


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