| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-028 (Poster presentation)
北海道の南西部,渡島半島の西側に位置する奥尻島は,日本海側の島嶼におけるブナの北限である。この奥尻島のブナ林の種組成とその特徴を明らかにするために,17箇所に調査区を設定し植物社会学的な種組成の記載を行った。また,比較対照として対岸の渡島半島で6箇所に,さらに下北半島から北上山地北部(以後,北上山地と表記)で10箇所に調査区を設定し,同様の調査を行った。
各調査区から得られた33の植生資料を,TWINSPANの手法を用い分類した。その結果,最初の分割でハクウンボクを含む3種を指標種として二つの植生型が区分された(A型,B型)。A型は,ツルアリドウシを含む4種を指標種としてさらに二つの型に細分され(A1型,A2型),B型も,アズキナシを指標種としてさらに二つの型に細分された(B1型,B2型)。各型に含まれる調査区を見ると,A1型の植生資料は,主に渡島半島と北上山地の標高500 m以上に位置する調査区からの資料であったのに対し,B1型の植生資料は主に北上山地の標高400 m以下の調査区からの資料であった。A2 およびB2型の植生資料は,一つを除くと全て奥尻島の調査区からの資料であった。
各植生型と環境要因との間の対応関係を明らかにするために,正準相関分析を行った。1軸に着目すると,奥尻島の植生資料からなるA2およびB2型は負側に配置されたのに対し,渡島半島および北上山地の植生資料からなるA1型およびB1型は正側に配置された。1軸は,最寒月の最低気温および寒さの指数と負の相関を,夏季の降水量とは正の相関を示したことから,奥尻島の調査区は,渡島半島および北上山地の調査区に比べ,冬季温暖で夏季寡雨である傾向が認められた。