| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-030 (Poster presentation)

鳥取砂丘多鯰ヶ池の湖岸に生育する植物

土江芙実, *永松 大(鳥取大・地域)

多鯰ヶ池(たねがいけ)は日本の重要湿地500に含まれ,鳥取砂丘からの飛砂でできた周囲3.1 km,面積0.18 km2 の淡水湖沼である。湖面には導入されたスイレンNymphaea spp.やフサジュンサイCabomba caroliniana がみられ,在来水草が圧迫されている。多鯰ヶ池の植物相は明らかになっていないため,本研究では多鯰ヶ池湖岸の植物相調査と植生調査を行った。

2014年の生育期に,多鯰ヶ池湖岸の植物相調査を行った。面積 5 m2 以上の植物群落9タイプについて相観植生図を作成した。あわせて湖岸組成調査を行い,自然湖岸 (粘土,砂,礫,岩,湿地) と人工湖岸に分類した。GPSとArcGIS ver10.1により解析を行った。

調査地全体で126種を確認した。このうち水生,湿生が63種で,全体の50%を占めた。絶滅危惧植物としてタチモMyriophyllum ussuriense やヒメフラスコモNitella flexilis var. flexilis など計6種を確認した。タチモは鳥取県内初記録,ヒメフラスコモは多鯰ヶ池初記録である。帰化率は,水生33 %,湿生11 %,その他33 %であった。湖岸で最も広い群落は外来植物のオオオナモミ群落で,次にメリケンカルカヤ群落であった。湖岸は,砂の延長が最も長く,自然湖岸が98 %を占めた。出現種数は粘土に最も多く,次いで湿地であった。

このように,多鯰ヶ池は比較的自然度の高い低湿地と評価できた。湖岸の基質は多様で,希少植物も存在した。しかし北側は外来植物の侵入が著しかった。湖内の魚類は現在,個体数の7割はブルーギル,2割はオオクチバスで,在来種は絶滅に近い。多鯰ヶ池では外来生物管理が今後の重要課題である。


日本生態学会