| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-032 (Poster presentation)
都市の住宅団地に成立する草本群落の種組成と立地との関係を明らかにするため,2014年3月から10月,神戸市内の5ヶ所の団地で植生調査およびフロラ調査をおこなった.対象とした団地は1960年代末から80年代にかけて建設されている.造成の過程の違いから,里地里山を造成した「里地造成型」(3ヶ所),里山の土砂採取跡地に建てられた「土取り跡地型」(1ヶ所),神戸港の人工島に建てられた「埋立地型」(1ヶ所)に区分した.団地内の立地は,頻繁に踏圧を受ける「プレイロット(団地内の公園)」,平地や緩い斜面の「住棟間芝地」,通常人が立ち入らない法面などの「斜面」の3つに区分した.得られた植生データをTWINSPANで解析した結果,団地内の緑地は春季には主に4タイプの群落,秋季には主に3タイプの群落に分けられた.いずれの団地でも,プレイロット周辺では春季にオランダミミナグサ群落,秋季にメヒシバ群落が成立していた.また住棟間芝地では,春季・秋季とも主に緑化由来のシバ類が優占する群落が成立していた.すべての団地で出現したこれらの群落は,都市の団地内緑地の一般的な群落と考えられる.埋立地型を除く団地の斜面では,アオスゲなどの在来多年草を多く含むスズメノヤリ群落がみられた.里地造成型の1団地の斜面では,ヒメミコシガヤなどの希少種をはじめ,多くの在来種を含むススキ群落が見られた.この群落の種組成は神戸市の里地の半自然草原と類似していた.過去の空中写真から,この団地の敷地には造成前の地形が一部とり残されたことが判明した.里地の草原が団地に取り込まれ,管理者による草刈りで現在まで維持されてきたものと考えられる.このように,都市の団地の斜面には,里地の名残りが見られる可能性がある.団地再開発の際はこうした植生に注意を払う必要がある.