| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-065 (Poster presentation)

窒素固定植物の老化葉からの窒素回収

*及川真平,菅原悠樹

葉が老化する際、葉内のタンパク質は加水分解され、一部の窒素 (N) は植物の他の部位に輸送、再利用される(N回収)。回収されなかった残りのNは枯葉と共に植物体外に失われる。老化葉からのN回収は、土壌中のN可給性が低い環境に生育する植物がNを保持する重要なメカニズムである。一方、タンパク質の分解やアミノ酸等の師管輸送にコストがかかるとすると、N可給性が高い環境では老化葉からのN回収の程度は低くなるかもしれない。

本研究で私たちは、N固定を行う植物のN回収能力がN固定を行わない植物に比べて低いのかどうかを調べた。温帯に生育するマメ科、カバノキ科、ヤマモモ科の野生植物22種と、圃場で育成したマメ科の作物16種(ダイズ7品種を含む)の葉のN濃度を測定した。N回収の指標として、N resorption proficiency(NRprof, 完全に老化した葉のN濃度)とN resorption efficiency(NReffi, = [成熟した緑葉のN濃度 – 完全に老化した葉のN濃度]/成熟した緑葉のN濃度*100)を用いた。調査した植物のNRprofは平均で0.6 g N m-2NReffiは60%であった。これらの値は、N固定を行わない多数の植物で得られている値とほぼ同じであった。本研究の結果は、N固定植物が必ずしもNを贅沢(?)に使っているわけではないことを示唆するかもしれない。さらに植物の分類群、葉寿命、種子N濃度、N固定菌と老化葉のN濃度との関係を解析した。


日本生態学会