| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-068 (Poster presentation)
熱帯地域の中でもとくにボルネオ島を含む海洋大陸は多量の降水による対流圏上端への潜熱解放によって、地球の大気大循環において主要な熱源となっている。また、熱帯多雨林からの蒸発散は降水の重要な源となっており、この地域の水循環に大きく影響している。近年、ランビル山国立公園ではフラックス観測によって熱帯多雨林の林分蒸発散量が観測されてきた。しかし、林分を構成するそれぞれの樹木の寄与度は明らかでない。熱帯多雨林は多様な種とサイズの樹木から構成されている。本研究では、通年にわたって個体蒸散量を定量し、林分蒸散量が少数の大径木に由来するのか、あるいは多数の小径木に由来するのかという問いに答えることを目的とした。
調査は林冠クレーン下の4 ha毎木調査区内で行った。約13 m四方の測定範囲を3カ所設定した。胸高直径(DBH)10 cm以上の全ての樹木について、熱消散法によって樹液流速度を観測した。とくに、幹断面の放射方向の変動を明らかにするため移動式センサーを併用した。同時に微気象および土壌含水率を観測した。2014年1~2月の結果を解析した。
その結果、計測した33個体には14科30種が含まれ、ほぼ全て別種であった。DBHの範囲は10~103 cmで個体サイズも多様であった。幹断面の最も外側の樹液流速度はDBHと関係がなかった。樹液流速度は幹の中心に近くなるにつれ小さくなり、この傾向は大径木で顕著であった。個体蒸散量はDBHに強く依存した。大径木10個体が林分蒸散量の8割を占めたが、小径木23個体も積算すると2割を占めた。測定した大径木は、平均的な樹冠高より樹高の高い突出木と考えられる。突出木は少数でも熱帯多雨林の水循環において重要であることが明らかになった。