| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-072 (Poster presentation)
対鼠性の向上を目指し開発されたグイマツ雑種F1の中でも,グイマツ精英樹の中標津5号を母親,カラマツ精英樹を父親としたクリーンラーチは,カラマツよりも初期成長が早く,木材の性能も高いため,新たな造林品種として着目されている。これまでの研究から,クリーンラーチの初期成長の早さは葉量よりも光合成能力の高さから生じており,クリーンラーチは成長期後半にVcmaxとJmaxがより高いことが明らかになっているが,これらの値を用いた光合成モデルで年間光合成量を試算した所,クリーンラーチの高成長を十分に説明できなかった。そこで,本研究では,クリーンラーチとカラマツの光合成の日変化特性を測定し,光合成の日中低下がクリーンラーチとカラマツの成長の違いを引き起こす要因となるか検討した。
森林総合研究所北海道支所苗畑に植栽し4年が経過した6年生のクリーンラーチ(3個体)とカラマツ(4個体)について, 2014年9月2日と3日に,晴天日のガス交換特性および木部圧ポテンシャル(Xp)の日変化測定を行った(6:00-19:00)。
葉面積あたりの光合成速度(P)はクリーンラーチでは平均7時20分に,カラマツでは平均8時12分にピークを迎え,その後日中低下した。ピーク時のPはクリーンラーチの方が高く,日中低下時のPはカラマツのほうが高かったが統計的に有意な差は認められなかった。結果として,1日の積算光合成速度は両者で有意な差は認められなかった。Xpは1日を通じてクリーンラーチの方がやや低かったが,蒸散速度とXpの関係から算出した通水抵抗は両者に明瞭な差は認められなかった。ガス交換や木部圧ポテンシャルの日変化特性から,クリーンラーチの初期成長の早さを説明できなかった。