| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-074 (Poster presentation)
森林の物質生産が環境変動によってどのような影響を受けるのかを正確に予測するためには、環境の変化に対応した個葉の光合成特性の時空間的変動を評価する必要がある。しかし、林冠位置によって光や温度環境が変化することは知られているが、このような微気候の垂直勾配が光合成の温度応答に与える影響は明らかにされていない。本研究では、林冠位置の違いと季節的な温度環境の変化によって、コナラ林冠葉の葉特性と温度-光合成関係がどのように変化するのかを調べた。
鳥取大学蒜山の森(35°18′N、133°35′E)に自生するコナラ成木の林冠を、上層 (高さ: 19.2-21.0m)・中層 (高さ: 15.8-17.5m)・下層 (高さ: 10.6-12.3m)に分割し、それぞれの葉についてガス交換測定を行った。
林冠上層から下層にかけて、どの測定温度でも光合成速度は低下した。林冠上層よりも中・下層で、葉内CO2濃度 (Ci)は高い値を示し、それにともない光合成の最適温度も若干増加した。一方で、林冠位置によって最大カルボキシル化速度(Vcmax)の温度依存性は変化しなかった。
これらの結果は、林冠位置と光合成の温度応答の両方を考慮しない群落光合成モデルでは、森林の炭素吸収量を過大に評価する可能性を示唆している。