| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-076 (Poster presentation)
樹木の幹肥大成長の季節変化を測定するには,定期的な試料採取による木部の解剖観察が必要である.しかし,定期的な試料採取によって観察木へのダメージが予測される.そこで,そのダメージを可能な限り少なくする方法の開発を目的に,樹木の展葉落葉にともなう幹の通導特性の季節性を樹木の幹へ電気インピーダンス計測を通して把握することを試みた.
2012年から2013年にかけて,京都市ではカツラ,ユリノキ,トチノキの落葉広葉樹3種と常緑広葉樹のアラカシを,つくば市では,カツラ,ユリノキ,カツラ,コナラ,クヌギ,ミズナラ,フサザクラ,ブナ,クリ,ハンノキの落葉広葉樹10種と,マテバシイ,アラカシ,シラカシ,スダジイの常緑広葉樹4種を対象に, 各樹種5個体以上の個体に1000Hzの交流を発生する測定装置を用いてステンレスの釘を電極にして電気インピーダンスをほぼ一ヶ月に一度,春先の落葉広葉樹の展葉期には2週に一度の頻度で測定を行なった.
その結果,樹種に関わらず電気インピーダンス値は3月から10月にかけては低い値を示し,10月以降から3月にかけて高くなっていく傾向を示した.これは京都市とつくば市で観測を行なった樹種全体でみられた共通した傾向であった. 季節を通して電気インピーダンス値の最高値を散孔材樹種と環孔材樹種,放射孔材樹種で比較すると,散孔材樹種で高くなる傾向がみられた.京都市の樹種とつくば市の観測結果に大きな違いはみられなかった.しかし,電気インピーダンスは気温に依存するので,これを補正する必要がある.以上の点を踏まえ,電気インピーダンス計測の定期的測定が樹木の生理活性を把握する指標としての目安になり得ることを議論する.