| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-081 (Poster presentation)
照葉樹のうち高木になる樹種は、暗い林床で発芽して生育し、成木となり林冠を形成するようになるまでにその個体サイズの他、生育環境が大きく変化する。そのため、照葉樹は一個体内に高い表現型可塑性・環境への順化能力を持つと考えられる。葉の特性は主に光環境の影響を受けて決定される一方、高木の樹冠内では高さにともない、水分環境も大きく変化するため、葉の形質の決定には光環境だけではなく枝の高さも作用する。本研究では高さによる影響と区別しながら葉の形態・生理的可塑性を評価し、耐陰性を含めた光順化における可塑性について、高木個体内および小個体間で行うことによって、対象とする照葉樹の葉で見られる光獲得における特性を明らかにすることを目的とした。調査は神戸市西区にある太山寺の照葉樹林にて行い、調査地の主要な常緑樹種であるコジイ・アラカシ・ヤブツバキを調査木とした。調査地の林冠部に光量子計を設置し、計測したデータと調査木の数箇所の高さで撮影した全天写真を用いて開空度と光合成有効光量子束密度(PPFD)を算出し、同箇所の高さを測定した。一年葉の形態的特性・光合成特性と光環境の関係を解析し、可塑性、耐陰性を評価し、また各樹種における高木個体内の可塑性と小個体間の可塑性を比較した。形態(LMA・葉面積)における可塑性は、三樹種とも高木個体内の方が高かった。一方樹冠付近の光環境を除いて比較した場合、可塑性に有意差は見られなかった。光合成能力については、両者に有意差はないか、小個体間の方が高い結果となった。葉の形態に関しては、高木個体では高さが可塑性に影響したことと、樹冠部を含む幅広い光環境に対して高い可塑性が発現することが考えられる。