| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-083 (Poster presentation)
琉球列島では、石灰岩性 / 非石灰岩性という性質が異なる2種類の土壌に対応して、構成種が大きく異なる2タイプの常緑広葉樹林が認識されてきた。これら2タイプの森林がそれぞれの土壌に対応して成立する過程は生態学的に非常に興味深いが、この要因やメカニズムについて具体的に明らかにした研究はなかった。そこで我々は、これら2タイプの森林において表徴種とされているアカネ科ボチョウジ属Psychotria の近縁植物2種(ナガミボチョウジ P. manillensis :石灰岩性広葉樹林の構成種、ボチョウジ P. rubra :非石灰岩性広葉樹林の構成種)を材料とし、(1)2種の生育と土壌の関係及び、(2)異なる土壌の接触地帯における2種の種間関係を明らかにすることを目的として研究を進めている。具体的には、温室においてこれら2種を対象にpHを変化させた土壌での栽培実験、pHとアルミニウムイオン濃度を変化させた水耕栽培実験を行い、土壌適応の違いを試験した。さらに野外においてはそれぞれの実生を相互移植した。加えて2種の実際の分布と土壌の対応を調査した。栽培試験・移植実験は今後の実生の成長を長期間追跡する必要があるが、約70日間実施したこれまでの結果から、土壌pHが高く中性からアルカリ性になるとボチョウジの生育が阻害される可能性が示唆された。また野外では土壌と2種の分布がよく一致していることが確認された。一方、異なる土壌の接触地帯では両種の同所的生育が確認され、フローサイトメータを用いたDNA含有量の調査から、一定の頻度で両種のF1雑種が生じていること、また戻し交雑は生じていないことが示唆された。以上の結果から、ボチョウジのアルカリ土壌への不適応と種間の関係が現在の2種の生育を決定する重要な要因であると考えられる。