| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-084 (Poster presentation)
近年、中間山地で維持されてきた伝統畦畔は、圃場整備(人為の拡大)や耕作放棄(人為の縮小)などによって土地利用形態が大きく変化してきている。土地利用の変化による植物や昆虫(バッタ・チョウ類)の多様性が減少していることは既に報告されている。送粉ネットワークはその地域の送粉サービスの評価や在来植物種・昆虫の個体群維持に関して重要な基礎データとなる。そのため、人間活動による土地利用の変化が送粉ネットワークにどのような影響を与えるかを早急に調べる必要がある。送粉ネットワーク構造を明らかにするには、多大な人的・時間的労力が必要となる。さらに、どの程度送粉されているかを確認するには、結実まで追跡する必要があるためより労力が必要となる。そのため、土地利用の変化による送粉ネットワークの変化の報告例は少ない。そこで、昆虫体表付着花粉および、柱頭付着花粉に着目することで、上記の問題を解決することができると考えた。
本研究では、異なる管理の水田畦畔(伝統・圃場整備・放棄水田)を対象に複数地点の土地利用間でネットワーク構造が変化し、送粉が実際にどの程度行われているかについて明らかにすることを目的とした。
各調査地点での訪花昆虫調査を行った。訪花した昆虫は捕獲し、付着花粉の同定を行った。同時に、各植物種の柱頭を採取し、柱頭に付着している花粉を同定した。
その結果、伝統畦畔では多種多様な訪花昆虫、植物が存在していたのに対し、放棄水田において、訪花昆虫、植物ともに種数、数が大きく減少し、ネットワーク構造が崩壊していた。
本研究の結果からも、伝統畦畔が非常に生物のハビタットとして重要であることが示された。また、同時に複数地点のネットワーク構造を明らかにした。本発表では柱頭付着花粉から実際にどの程度送粉されているかを中心に議論を行う。