| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-092 (Poster presentation)
【研究目的】カキノキ科カキノキ属のリュウキュウコクタン(Diospyros ferrea)は常緑の亜高木であり、熱帯から亜熱帯域に分布する。演者らは、亜熱帯樹木の繁殖生態や開花結実機構、繁殖生理、種子散布などの研究を進めている。本発表は、リュウキュウコクタンにおける結実の年変動の違いが果実の炭素含有量に及ぼす影響を検証したので報告する。【方法】樹高4.9m、胸高直径14.6cmの樹齢33年生雌株3本を供試した。豊作年の2010年と並作~凶作年の2013年の2年間、果実の肥大成長が安定する7月下旬にそれぞれ果実を採取し、NC元素分析器を用いて果実の炭素含有率を定量した。【結果と考察】2013年の果実生産量(乾燥重量)は、2010年に比べて約1/4であった。両年とも果実サイズに差は認められなかった。2013年における果実の炭素含有率は43%以下であり、2010年の46%台よりも顕著に低かった。これは、果実生産量が豊作であった2010年は果実に光合成産物(糖)が集積したことにより炭素含有率が増加したが、果実生産量が並作~凶作年であった2013年は果実への光合成産物(糖)の集積が少なく炭素含有率が低下したと考えられる。光合成産物の分配は、果実の生産、成熟に必要な光合成産物を果実や繁殖枝(モジュール)がどれだけ集積できるかという果実のシンク能に依存するといわれる(水谷,2002)。豊作年で果実の生産量が多いと果実と繁殖枝レベルでも光合成産物(糖)の集積、いわゆるシンク能が強くなることが考察された。さらに、2013年の果実サイズが2010年に比べて著しく低下しなかったのは、当年葉の光合成産物である可溶性糖や枝のデンプンを果実成熟に利用した結果であると推察された。