| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-093 (Poster presentation)
トドマツ精英樹採種園からの事業的な種子生産は昭和40年代後半から開始され、現在、トドマツ種苗の9割以上を占めている。中でも、日高地方の新冠町では、精英樹の産地(5区域:日高・函館、道西南、道央、道東、根釧)ごとに採種園を造成するなど、1箇所で複数の産地の種子が生産できるよう設計されている。これまでにも多くの種子が生産されてきたが、個体あたりの種子生産量や、産地による種子生産性の違いなど基礎的な情報が少ない。本発表では、造成から約50年を経過した採種園において、3産地16本の採種木を伐倒し、樹冠垂直方向における球果の着生位置、球果着生数を調査した。
調査した2014年は並作年であったが全調査木で着果が確認できた。1個体の球果着生数は202~1,943個と個体間でばらついた。球果は樹冠上部ほど着生数が多く、全体の着果数が多い個体ほど垂直方向の着生範囲が広くなる傾向があった。着生数は下方に向かって一定の割合で減少していた。
1個体の球果着生数は、胸高直径(35~54cm)に対して正の関係が、周囲の個体密度(39~107本/ha)に対して負の関係がみられ、2要因により球果数のばらつきを説明できた。これは周囲の個体密度が少ないことで十分な光を受けることができ、成長が促進される結果、球果生産量が増加しているためと考えられた。
一方、精英樹の産地による種子生産性に違いは認められなかった。道内各地から集めた精英樹の個体は、植栽地の気象条件に合わせて繁殖していると考えられた。