| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-094 (Poster presentation)
温帯や熱帯地域では、実に多くの被子植物がアリと被食防衛共生関係を結んでいる。そのほとんどは花外蜜や食物体などの餌だけを分泌して防衛者となるアリを誘引するが、中にはアリに営巣場所(ドマティア)を提供する「アリ植物」と呼ばれるものが存在する。その多くは非常に強力にアリに防衛されるが、一方で物理的・化学的防衛は極めて弱くなっている。このようなアリ植物は様々な被子植物の系統で何度も進化したことが知られているが、強いアリ防衛の獲得に関わる遺伝的背景は調べられていない。
オオバギ属(Macaranga、トウダイグサ科)は東南アジアを中心に分布する植物であり、約30種のアリ植物を含む。これらは中空になった幹内にアリを住まわせ、托葉や新葉から分泌される食物体を餌として提供する。本研究では、アリ植物オオバギ属において、強いアリ防衛の獲得に関わった遺伝的変化について調べる。具体的には、 (1)強いアリ防衛の獲得に伴ったと思われる特徴、例えば二次代謝物質生成に関わる遺伝子の減少などがゲノムに見られるか、(2)どのような遺伝子が食物体分泌やドマティア形成など、アリのコロニー維持に必要な形質に関わっているか、という点を検討しようとしている。発表者らはこれらの問いに答えるため、オオバギ属の中で最も強いアリ防衛をもつM. winkleriのゲノム解析を行った。今回は、得られたゲノムデータのアノテーションを行い、(1)について考察する。また、今後はこのデータをリファレンスとして遺伝子発現解析を行うことで、(2)について調べていく。