| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-097 (Poster presentation)

森林に自生するヤマノイモのウイルス保有率が新規感染に与える影響

井上みずき・鎌田俊太郎・藤晋一(秋田県立大・生物資源)

ウイルスが野生植物個体群に広がっていくメカニズムを明らかにすることは、野生植物の個体群動態やウイルスとの共進化を考えるうえで重要である。材料として森林に自生するヤマノイモとそれに感染するヤマノイモモザイクウイルス(JYMV)およびヤマノイモえそモザイクウイルス(ChYNMV)を対象とする。ヤマノイモのウイルス感染経路にはムカゴを通じた垂直伝播経路とアブラムシの吸汁による水平伝播経路(ウイルス葉で吸汁したあとにウイルスフリー葉に吸汁することで感染が広がる経路)が想定される。とくに、水平伝播経路では移動能力が高く探索吸汁を繰り返す有翅アブラムシの寄与が大きいと考えられている。そこで森林において有翅アブラムシによる水平伝播経路がウイルス感染拡大に及ぼす影響を定量的に明らかにする。秋田市と西東京市の林に200平方メートルのプロットを設置し、8月(有翅アブラムシの出現前)と10月(有翅アブラムシが出現中であり、ヤマノイモの地上部が枯れる直前)にヤマノイモラメットの葉をサンプリングした。葉からRNAを抽出し、RT-PCRによりウイルスの有無を判定した。8月にウイルス無であった個体が10月にウイルス有になった割合を新規感染率とした。両調査地でJYMVの新規感染がみとめられ、個体群のウイルス保有率が高い西東京市で新規感染率は高かった。一方、ChYNMVは西東京市の個体群でのみ少数検出され、新規感染率はわずかであった。ヤマノイモ野生個体群においてウイルスの水平伝播経路が確認されたことから、今後、2つの経路の寄与率を明らかにすることが重要であろう。


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