| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-099 (Poster presentation)
植生復元における目標植生の回復は,復元地において残存するあるいは積極的に導入された復元目標種の,発芽・定着・残存・世代更新の各プロセスを経て実現される。半自然草地はしばしば植生復元の対象となる植生タイプだが,発芽・定着・残存・世代更新過程のうち,植生復元において,個々の目標種の復元のボトルネックとなる段階がいずれにあるのか十分に解明されていない。本研究では,発芽時や個体間競争の際に重要となる光環境に着目し,数種の草原生植物種の発芽・生育特性に関する実験的研究を実施した。
ススキ,ワレモコウ,オガルカヤ,トダシバ,ノハラアザミ,オトコヨモギ,アキカラマツ,シラヤマギクを対象種とした。発芽試験では,インキュベータにて明暗条件(明時の光強度2レベル)と暗条件を設定した。生育試験では,各供試種を1個体ずつ5反復として,全天,相対光量子束密度40%,同10%の条件下で播種後1シーズン,ポット試験を行った。
発芽試験では,光強度の強い明暗条件における発芽率がいくつかの種で低下し,これらの種については暗発芽の性質を持つことが推測された。一方,暗条件で発芽率の低下する種は認めらなかった。生育試験では,相対光量子束密度10%における生産量は全天と比較して全ての種で有意に低下したが,同40%条件では,全天と比較して生産量が有意に減少するグループと,有意な減少が認められないグループに二分された。前者は生産量の絶対値が相対的に大きく,地上部へのバイオマス分配がより大きい種から構成され,後者は純産量が小さく地下部への分配が大きい種から構成された。
以上を踏まえ,植生復元において個別の目標種の復元にあたってボトルネックとなる生育段階について考察を行った。