| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-140 (Poster presentation)

カシノナガキクイムシの穿孔被害を受けて生き残った木の行く末

*伊東康人,藤堂千景(兵庫農技総セ),田下直人,山崎理正(京大院・農)

病原菌 Raffaelea quercivora を有するカシノナガキクイムシが健全なブナ科樹木に穿孔することによって引き起こされるブナ科樹木萎凋病(ナラ枯れ)が,日本各地で蔓延している.ナラ枯れ被害林内には,カシノナガキクイムシによる穿孔を受けたにも拘らず枯死に至らない個体(穿孔生存木)が存在しているが,穿孔生存木のその後の動態はほとんど明らかにされていない.穿孔生存木の枯死による倒木リスクやその後の更新を予測する上で,その生残動態を明らかにすることは重要である.そこで本研究では,構成樹種と被害程度が異なる林分において穿孔生存木の生残動態を調査し,穿孔生存木の生死に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とした.調査地は京都府東部(約30ha,平均胸高直径約30cm,出現ブナ科樹種ミズナラ,クリ,コナラ),及び兵庫県北部(約2ha,平均胸高直径約20cm,出現ブナ科樹種コナラ,ナラガシワ,クリ,アベマキ)に位置する二次林とした.両二次林では,ナラ枯れ被害が発生した当初から毎年被害調査を行っており,樹種,胸高直径,立木位置を記録している.各年の被害調査時に穿孔生存木であった個体の2014年時点での生死を記録し,穿孔された時点での周辺の穿孔木密度を複数スケールで計算し,5mメッシュの数値標高モデルから立木位置のTPI(凹凸度の指標)を算出した.京都府東部の二次林では6年間で出現した635本の穿孔生存木のうち177本が,兵庫県北部の二次林では3年間で出現した639本の穿孔生存木のうち37本が,2014年時点で枯死していた.2014年時点の穿孔生存木の生死を応答変数とした一般化線形モデルを調査地別に構築したところ,どちらの調査地でも胸高直径と周辺の穿孔木密度を組み込んだモデルの方が説明力は高かったが,そのスケールは調査地によって異なっていた.


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