| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-141 (Poster presentation)

北海道北部の針広混交林における風倒後10年間のマウンド上での更新動態

吉田俊也

強風などに起因する、根返りによって形成されたマウンド・ピットは、光条件の改善や鉱質土壌の露出などを通して多くの高木性樹種の重要な定着サイトになる。日本海側の多雪地域の森林では、積雪下での初期の定着阻害と下層におけるササ類の優占のために、とくにその重要性が高いとされる。本研究では、北海道北部の天然生針広混交林において、主要な高木性樹種の定着に寄与するマウンド・ピットの特性を明らかにすることを目的とした。具体的には、ひとつの林分内で同時に形成された複数のマウンド・ピットを対象として、定着した稚樹の動態を、それぞれの箇所における資源量等の不均質性と関連づけた。北海道大学雨龍研究林424林班内の天然生混交林(面積3ha)において、2004年9月の台風18号によって生じたマウンド・ピット39箇所を調査した。風倒から2年後にあたる2006年8月、それぞれのマウンド・ピット内の微地形別に光・土壌条件を計測した。同年9月および翌2007年9月に、すべての高木性樹種の実生を個体識別したうえで高さを測定し、2014年9月にこれらのうち高さ5cm以上の個体について再測した。風倒後3年目の時点で、マウンド・ピットに定着した主要な高木性樹種はアカエゾマツ・トドマツ・シラカンバであった。樹種に関わらず、初期の実生密度はピットで明瞭に高かったが、風倒後10年目まで生存した個体は数%未満(<1本/m2)であった。マウンド上での生存率はシラカンバが平均30%(1.9本)、トドマツが20%程度(0.5本)であったのに対して、アカエゾマツは5%程度(0.2本)にとどまっていた。多くの場合、稚樹の生存に対して光強度が負の影響を与えていたことから、攪乱時に周囲に上層木が残存する条件下で、稚樹の定着確率が高くなると考えられた。


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