| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-143 (Poster presentation)

ナラ枯れ後の広葉樹林におけるササの処理が稚樹の更新に与える影響

佐野 淳之(鳥取大・農), 金森 和(鳥取大・農)

ササ型林床を持つ森林でナラ枯れが発生した場合、ギャップが形成され光環境が改善された林床でさらにササが優占し、森林の更新が非常に困難になる。そのため、地表処理を行い、更新を促す必要がある。したがって、ササ型林床を持つナラ枯れ後の森林の更新が順調に行われ、林分が速やかに回復するのかは森林の維持にとって重要な問題となる。しかし、ササ型林床を持つナラ枯れ後の森林における地表処理が、樹木の天然更新を促進する効果があるかどうかは分かっていない。そこで本研究では、ナラ枯れ後の森林において、地表処理が樹木の生残や更新に与える影響を明らかにすることを目的とした。

調査は、1994年にナラ枯れが確認され、20年が経過した林分である鳥取県岩美郡岩美町鳥越の扇ノ山(標高600 m地点)の落葉広葉樹林で行った。

樹高1.3 m未満のものを稚樹とし、3年前に地表処理を行ったササ刈り区と落葉層除去区で稚樹を追跡調査した。2年間の結果からササが樹木の更新に大きく影響していることがわかったので、新たにササ刈り、地下茎の切断、掻き起こしの地表処理を行ってササの回復について調査した。

ササは稚樹出現の制限要因となっていた。これは、光環境の悪化やげっ歯類による種子の被食が要因と考えられる。地表処理を行うことで稚樹の出現数は増加した。ササの処理については、地下茎の切断や除去をすることでササ刈りに比べてササの回復量が小さくなったことから地下茎切断や掻き起こしはササの回復を抑制するのに効果があるといえる。

ナラ枯れ後、コナラ林を維持するためには年に数回のササ刈りと地下茎の切断を行うことで可能になる。多様な樹種が生育する混交林にするためには、ササ刈り+落葉層除去や掻き起こしなどの処理が有効である。


日本生態学会