| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-144 (Poster presentation)

局所林分の林相が異なる渓畔景観における種子散布制限

*星崎和彦(秋田県立大), 松下通也, 柴田銃江, 野口麻穂子(森林総研)

温帯の渓畔林には、しばしばブナ林よりも樹種が多様な林分が発達し、多様な撹乱体制との関連(ニッチ分割)が古くから指摘されてきた。しかし近年の研究では、樹種構成の多様な森林における多種共存にはニッチ分割と競争的優位者の不在(種子散布制限・更新制限)の双方が重要であることが分かってきている。

種子散布制限の評価は、一般にはある樹種の種子の林分内における到達箇所(種子トラップ数)の割合を計算することによることが多いが、種子どうしの競争関係を定量化するためには、トラップごとの解析に基づく評価が重要であろう。また、渓畔林の撹乱体制は河川の勾配や流域面積に大きく依存するため、渓相が異なると隣接した渓畔林どうしで林分構造が異なる場合は、景観スケールでの評価も必要になるだろう。

そこで本研究では、渓相の異なる隣接した渓畔林を含む奥羽山系北部の渓流景観において、トラップ単位での落下種子の樹種構成(競争相手の組み合わせ)と林分単位での各樹種の散布制限、散布制限の林分間比較(メタ群集における移住可能性)について、実態を明らかにすることを試みた。

景観全体にわたって設置した120個の種子トラップには2009~2013年の期間に24種26700個の種子が落下した。樹種別ではカツラ、サワグルミ、ブナ、ハリギリ、ミズキの順に多く、上位5種で全体の落下種子数の88%、上位9種で全体の98%を占めていた。調査期間をプールするとそれぞれのトラップには平均6.9±2.5種の種子が落下していた。

発表では、落下種子の空間的偏りを局所林分の構造に沿った解析を報告する予定である。


日本生態学会