| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-149 (Poster presentation)
近年各地でブナ林が集団で枯死する現象が観察されるようになっている。これまでに大気汚染、シカや昆虫などとの生物相互関係が複合的にブナの枯死に関与していることが明らかにされている。この結果、ブナ林が今後とも長期間にわたり現状を維持できるのか疑問視され、地球温暖化の影響によっても中国山地では今世紀末には全域でブナ林が消滅すると予想されている。ブナ林の衰退が報告された丹沢山系ではササ原が拡大し、次世代が育っていないブナ林は今後各地で消滅すると予想される。そこで、ブナの直径と樹齢をもとにブナ林の樹齢構成を調べて、構造上脆弱なブナ林を示すことを試みた。
岡山県北部の花見山、毛無山、若杉峠でブナ自然林内の、それぞれ標高1000m付近に調査区を設定して、林冠構成種やすべてのブナの位置やサイズ、樹齢を2006年から調査した。樹高が1.7m以下の個体については長さと、長さの1割高での直径を測定した。また、花見山では樹齢を調べ、基底面積と樹齢の関係式を導き出し、他の地域の樹齢解析に用いて森林の履歴を推測して、将来を予測した。
花見山と若杉峠のブナ林では、林内には樹齢の異なるブナの低木や稚樹が多数生育しており、その樹齢構成から今後ともブナ林として継続できるのに対して、毛無山ではブナの低木や稚樹はなく、高い稈密度のササを刈り取らなかった場合、優占するおよそ140歳のブナが枯死すれば、ブナ林として継続できないことが予測された。
ブナの直径のデータからブナ優占林の将来を予測する方法を用いて、全国のブナ林で樹齢構成を調べて、低木や稚樹が育っていないブナ林を明らかにし、森林衰退の脅威となっている環境要因の影響を受ける前に、更新を促すなどの対策を早期に実行することによって、ブナ林の衰退や消滅を回避できると考えられる。