| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-152 (Poster presentation)
京都東山の大文字山は多くが広葉樹二次林に覆われているが、この10年ほどの間にニホンジカの増加がみられ、またナラ類集団枯損(ナラ枯れ)の発生もあった。これら2種の要因が複合して広葉樹二次林にどのような影響を及ぼしているのか、ナラ枯れ後の更新がどのようになっているのかを把握することを目的として調査をおこなった。
調査は大文字山の北西部にある銀閣寺山国有林においておこなった。1992年に210m×50mの方形区を設置し、これを420個の5m×5mの小方形区に分割した。小方形区ごとに出現した下層木(当年生を除く実生から胸高直径3cm未満の幹)の樹種を記録した。2014年に同様の調査をおこない、出現種の比較をおこなった。各小方形区は、上層の林分タイプから、(A)広葉樹二次林、(B)針葉樹人工林、(C)抜き伐り広葉樹二次林の3タイプに分類された。(C)は2005年に本数比で50%程度の本数調整伐があった広葉樹二次林である。
結果として、全体としての出現種数および小方形区あたりの平均出現種数にはおおきな変化は認められなかったが、個別の樹種については増減が認められるものがあった。クロバイは、いずれのタイプの林分においても共通して増加していた。クロバイは常緑広葉樹林内のギャップなどで更新することが知られており、またシカの不嗜好性樹種でもあることから、ナラ枯れによってできたギャップにおいても更新し、シカによる被食頻度が低いために生残している可能性が考えられた。一方、シカの嗜好性樹種であるアオキ・イヌツゲなどには顕著な減少が認められた。このほか、ナラ枯れ後のギャップにおいて外来種であるナンキンハゼの定着も確認された。