| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-153 (Poster presentation)

花序内における3次元花角度の変異はクサギの雄繁殖成功を高める

*坂本亮太(京大・生態研センター)

どこに花を咲かすか?どの向きに花を咲かすか?といった植物個体内における花序の構造は,送粉者の訪花行動と密接にかかわりあい進化してきたと考えられる。その中でも,花がどのような角度で咲くのか?が広く注目され,重力や地面に対しての水平,垂直,上向き,下向きなど,様々な方向へ咲く花の適応戦略が解明されてきた。とはいえ,すべての花が水平,垂直といった2次元で表される角度を用いて評価できるわけではない。特に半球状の花序を有する植物においては,すべての花が放射状に咲くときにディスプレイ効果が最も高くなるため,花序内で咲く最適な花の向きは異なるであろう。とはいえ野外で観察してみると,半球放射状の構造から大きくずれ,花柄方向に対して折れ曲がって咲く花が多くみられる。

そこで本研究では,半球状の花序を咲かすクサギを用いて,花序内で咲く個花の方向を花柄方向に対しての3次元角度としてとらえ,その最大値を計測し,角度ごとに送粉者の接触頻度,葯内花粉数,種子生産率を明らかにし,3次元角度をもとに訪花行動を利用した植物の送粉戦略を議論する。

ハイスピードカメラによる観察の結果,3次元角度が大きい花において,送粉者であるホシホウジャクによる葯への接触が多く生じていると明らかになった。加えて,それら3次元花角度と葯内花粉数とには有意な正の相関関係が示された。一方で,3次元角度による柱頭への接触頻度の増減は観察されず,種子生産率とも有意な相関関係は示されなかった。また送粉者は,接触が生じた訪花の直後に,接触しなかった時よりも有意に訪花する花序を変更すると明らかになった。

これらの結果は,クサギの3次元花角度の変異が送粉者の訪花行動に対しての適応戦略であり,多くの自家花粉を他個体へと送粉させ,雄繁殖成功の増加に寄与していることを示唆している。


日本生態学会