| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-154 (Poster presentation)
奈良公園における、ニホンジカの採食に対する多年生草本のイラクサの応答を調べるため、フェンスで囲まれ、シカの採食圧が低い竹林内に2013年に調査区を設定した。2013年5月に人為的に茎頂端を切除した個体(以下切除)と非切除個体について、葉面積、刺毛数、刺毛密度及び刺毛長等について、2013年8月(昨年度発表済み)と2014年5月に調べた。2014年5月に、前年の切除個体を再度切除したもの(2年連続切除)と今年は切除しないもの(前年のみ切除)、非切除個体の3つの処理区を設け、8月に上記の形質を測定し、刺毛形質の表現型可塑性を評価した。結果(1)5月の葉面積は、非切除の方が前年切除個体に比べて有意に大きく、8月は切除個体の方が大きい。(2)5月の刺毛数は、前年度切除と非切除個体間で差はなかった。8月の刺毛数は葉の表面では差は認められなかったが、裏面では切除の方が非切除個体よりも多く、2年連続切除の方が前年のみ切除個体よりも多かった。(3)5月の刺毛密度は、両面共前年度切除の方が非切除よりも高かったが、8月には、差はなかった。(4)5月の刺毛長は、前年度切除と非切除個体で差はなかった。8月の刺毛長は両面共に切除の方が、非切除個体より長かった。裏面のそれは、2年連続切除の方が前年のみ切除個体より長かった。
以上の結果から、前年度の切除により葉の両面の刺毛密度は1年後の5月には高いが、8月には差はなくなること、また、切除個体の8月の葉の裏面において、切除回数が多くなるほど刺毛長が増加することが示唆された。本種の誘導防御の強度は、シカの採食頻度の高い場所で高まるものと考えられる。