| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-157 (Poster presentation)
薄暮から深夜にかけて活動するスズメガ類は,時刻や月齢などに伴って刻々と変化する光環境のもとで,採餌する花を探索する。このように限られた環境のもとで,スズメガは何を手がかりに花を探索しているのか。また,時間帯によって利用する手がかりや選好性は変化するのだろうか。これらの問題を解決するために,キスゲ属植物を用いた野外訪花実験を行った。キスゲ属のハマカンゾウとキスゲは,それぞれアゲハチョウ媒・スズメガ媒であり,花色・花香・形態など対照的な花形質をもつ。両種を交配したF2雑種は形質の組合せが分離し,花形質が大きくばらつく。このF2雑種36株を用いて野外実験集団を設置し,18:30~24:00に訪花観察を行うことで,スズメガが訪花の手がかりとしている花形質を評価した。
スズメガの訪花頻度は,20:00と22:30という2つのピークが見られた。花形質に対する選好性は時刻によって変化せず,一貫して強く紫外線を反射する花を選好した。一方,花香強度や花冠向きの訪花頻度に対する有意な影響は検出されなかった。この結果から,スズメガは色の恒常性をもち,花の探索には視覚が重要な役割を果たしていることが示唆された。