| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-158 (Poster presentation)

ナラ枯れが野ネズミの食性に与える影響

柴田銃江*,島田卓哉,八木橋勉(森林総研東北),兵藤不二夫(岡山大)

ナラ枯れによる森林の組成構造変化が食物網構造に与える影響を明らかにする研究の一環として、ナラ枯れ林における野ネズミの食性変化を調査した。山形県内のナラ枯れ被害程度と経過年数(ナラ枯れ枯死木が発生してからの年数)の異なる広葉樹二次林16林分で、秋季にアカネズミとヒメネズミを捕獲した。捕獲個体の体重を測定するとともに、体毛の炭素および窒素の安定同位体比を測定した。

その結果、アカネズミでは、炭素安定同位体比はどの個体についても-24‰程度だったが、窒素安定同位体比は被害発生から10〜20年経過した古いナラ枯れ林分で未被害林よりも3‰程度低くなり、より植物食に偏る傾向がみられた。また、古いナラ枯れ林ほど雌の個体サイズが小さくなったが、雄では林分間で差はみとめられなかった。一方、ヒメネズミでは、炭素安定同位体比はアカネズミよりも個体間差が大きく、より多様な植物由来の餌を摂取していることが示唆された。林分や性別による炭素、窒素安定同位体比、体サイズの違いはみとめられなかった。

以上の結果から、野ネズミのナラ枯れに対する反応は、その採餌特性を反映して異なると考えられる。そして、種類によっては影響が長期化することが予想される。


日本生態学会