| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-160 (Poster presentation)

高山帯におけるマルハナバチ群集組成と訪花植物の季節変動と年変動

*工藤岳(北大),井本哲雄

マルハナバチは高山生態系において大変重要な花粉媒介者であり、多くの高山植物の受粉サービスを担っている。しかし、日本の高山帯におけるマルハナバチ組成やその季節活性・個体群変動などの情報は大変限られている。北海道大雪山系の高山帯で、2011–2014年の4年間に渡り、ほぼ週単位でマルハナバチの種構成、出現頻度、訪花植物種、開花時期と活動時期の同調性について観察を行った。

赤岳・黒岳・旭岳・化雲岳・美瑛富士・富良野岳の6地点でマルハナバチ種組成を比べた結果、高山帯ではエゾオオマルハナバチ・エゾヒメマルハナバチ・アカマルハナバチ・エゾナガマルハナバチの4種でほぼ構成されていることが分かった。最も一般的な種はエゾオオマルハナバチであり、高山帯で営巣と越冬を行っていると考えられた。エゾヒメマルハナバチは高山帯で営巣を行うが、越冬は一般的ではないようである。一方で、アカマルハナバチとエゾナガマルハナバチは、移住者として高山帯に採餌に訪れていると考えられた。エゾオオマルハナバチの活動期間は最も長く、6月初旬から9月上旬である。エゾヒメマルハナバチとエゾナガマルハナバチは、シーズン中期から後期にかけて増加した。一方でアカマルハナバチの活動期は、シーズン中期に限定されていた。個体数の年変動はいずれの種でも比較的大きく、種間での同調性は認められなかった。高山植物群集の開花フェノロジーは、気温や雪解け時期の変動により年変動が見られた。マルハナバチの季節活性は概ね開花フェノロジーパターンと同調していたが、異常な温暖年(2012年)には、マルハナバチの季節活性と開花パターンの間に顕著なミスマッチが生じていた。これは、社会性ハナバチと高山植物の共生関係が気候変動に対して脆弱であることを示唆するものである。


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