| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-162 (Poster presentation)
マツブサ科に属しているマツブサやサネカズラは日本に生息する原始的な被子植物であり、これまでにタマバエに送粉されることが示唆されている。本研究では、マツブサの訪花タマバエの種構成とその地理的変異を明らかにするため、マツブサに訪花したタマバエを採集しミトコンドリアDNAのCOⅠ領域を用いた分子系統解析を行った。
岐阜、愛知、石川、神奈川、岩手の9集団で採集し、ミトコンドリアDNAのCOⅠ領域の部分配列583bpを108サンプルで得た。その結果、121の変異サイトがみられ、31ハプロタイプが検出された。TCS1.21を用いてハプロタイプネットワークを作成したところ、マツブサに訪花するタマバエのハプロタイプは大きく2つのグループ(それぞれ62個体と42個体から成る)に分かれた。残りの4個体(岐阜の2個体、石川と岩手の各1個体)は2グループから大きく外れるハプロタイプをもっていた。また2つのグループ間には約50塩基の違いがみられた。これらのグループはML法によって作成した系統樹上でもそれぞれクレードを形成し、マツブサに訪花するタマバエは少なくとも2種存在することが示唆された。また、前回報告したサネカズラに訪花するタマバエがもつハプロタイプと、今回得たマツブサに訪花するタマバエのハプロタイプは一致するものがなく、異なる種が訪花することが明らかとなった。また、分子系統解析から、マツブサ科の植物に訪花するタマバエでは、それぞれのホストに対する進化が1回のみ生じたのではなく、ホストを代える進化が複数回起きたのではないかと考えられる。