| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-163 (Poster presentation)

在来捕食者の外来植食性昆虫に対する適応

*安東 義乃(北大FSC),内海 俊介(北大FSC)

被食者の密度や表現形質は、捕食者のエサ選択に影響を与えうる。ある植食種が著しく集中する環境下では、その植食種が選択的に捕食されることがある。一方、外来植食性昆虫は、しばしば同じ原産地由来の外来植物上で優占種となるが、それは天敵からの捕食を回避しているからという説がある(天敵解放仮説)。しかし、外来種がしだいに個体数を減らす報告例もあり、在来捕食者の外来植食性昆虫に対する好みが時間的に変化する可能性が考えられる。外来植食者と在来捕食者の相互関係についての研究は長い間見過ごされてきたが、近年では外来種の農業害虫の駆除として在来種のスイッチング捕食の研究例もあり、応用的側面でも重要な視点である。

私たちは、外来植物セイタカアワダチソウ Solidago altissima の上の節足動物群集についての長期的な調査(野外観察や操作実験)を2000年から行ってきた。調査初期(2003年まで)、外来種セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ Uroleucon nigrotuberculatum がセイタカアワダチソウ上の優占種であり、捕食はほとんど観察されなかった。しかし2004年以降のセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシの密度は減少し、その捕食が頻繁に観察されるようになった。また、寄生蜂による寄生率も増加していた。捕食実験では、アブラムシの捕食者の個体数と種数は調査初期に比べると飛躍的に増えており、ほとんどの種が複食性捕食者であった。このような傾向はアブラムシだけではなく、その後に定着した外来種アワダチソウグンバイ Corythucha marmorata においても観察された。今回は、その長期観察と捕食実験の結果をご紹介し、在来捕食者の外来植食性昆虫に対する好みの変化が生じたメカニズムについて議論したい。


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