| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-164 (Poster presentation)

ツムギアリ営巣木における果実食鳥類の果実利用

*木村一也(金沢大・里山里海プロ),大河原恭祐(金沢大・自然・生物)

アジア熱帯域を中心に分布するツムギアリ(Oecophylla smaragdina Fabricus)は捕食性が非常に強く,植食性昆虫を排除するなど宿主となる植物に対する生物的防除としての役割が数多く報告されている。一方でツムギアリは送粉昆虫を排除することから,植物の繁殖成功に負の効果を与えることが知られている。本研究では鳥類による種子散布に注目し,ツムギアリの有無が果実‐果実食鳥類の互恵的関係に与える効果を明らかにするため,ツムギアリ営巣木(徘徊木を含む)と非営巣木の果実食鳥類相を調査した。

インドネシア・ジャワにあるボゴール植物園に植栽されたクスノキ科樹種の結実木を対象にして,ツムギアリ営巣木と非営巣木を選び,それぞれの樹冠に訪れる果実食鳥類の張り込み観察を行った。4樹種(Cinnamomum 2種,Cryptocarya 1種,Litsea 1種)を観察した結果,全体で11鳥種の樹上採餌行動が確認された。そのうち5種の果実食鳥類は,2鳥種(カルカヤバト,コシジロヒヨドリ)が種子散布者,3鳥種が果肉をつつく果肉消費者として類別された。訪れた果実食鳥類の種数はツムギアリ営巣木と非営巣木のあいだに差はみられなかったが,営巣木の果実食鳥類の種多様度は低かった。さらに非営巣木では主に2種の種子散布者が採餌した一方,営巣木ではカルカヤバトのみが優占的に採餌していたことから,ツムギアリの影響はコシジロヒヨドリに対して大きく,カルカヤバトに対して小さかったと考えられる。このようなツムギアリ営巣木における貧弱な果実食鳥類相や一部の種子散布者の排除は,ツムギアリによる営巣が植物の種子散布成功を間接的に低下させる可能性を示唆している。


日本生態学会