| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-166 (Poster presentation)
都市近郊の森林は、宅地開発などにより断片・孤立化が進行している。さらに、我が国の都市近郊林では、かつて大部分が薪炭林等として利用され、アカマツ・コナラを中心とする二次林となっていたが、燃料革命以降その多くが放置され、遷移が進行し、シイやカシを中心とする常緑広葉樹林に変化してきている。このような断片・孤立化、遷移の進行といった都市近郊林の林分属性の変化は、種子散布者相を変化させ、種子の散布パターンにも影響を与えている可能性がある。本研究では、京都市近郊の遷移段階の異なる3つの林分(落葉広葉樹二次林;「落葉林」、近年コジイ優占林になった林分;「コジイ林」、古くからのコジイを中心とする常緑広葉樹林;「常緑林」)に調査地を設け、林分への飛来鳥類の観察とシードトラップの回収を2011年より定期的に行い、林分構造の違いが鳥による種子散布パターンにどのような影響を与えているのか解明することを目的とした。
全ての鳥類及び果実食鳥類の観察頭数は、どの年度においても、季節を通じて、「常緑林」で「落葉林」よりも有意に高くなっていた。果実生産量が最も少なかった「コジイ林」は「常緑林」と「落葉林」の中間的な頭数を示した。果実食鳥類の観察頭数は、林分における季節毎の果実生産量とは関係なく、林分の違いに有意に影響を受けていた。散布種子の種数及びプロット外から散布される種子の種数は「常緑林」で「落葉林」よりも有意に多かった。「コジイ林」も有意ではないものの、それらの種数は「落葉林」より多い傾向が認められた。鳥類の飛来が、果実生産量よりも林分構造そのものに依存し、それが散布種子の多様性にも影響している可能性が考えられた。