| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-170 (Poster presentation)
動物媒花の多くの分類群で、ポリネーターシフトが花形態の多様化に関わっていることが指摘されている。しかし、このポリネーターシフトが起こる詳細な過程や、どのような環境下で進行するのかについてはよくわかっていない。本研究で用いるママコナ属は主にマルハナバチ属などの長舌のハナバチ類が主要なポリネーターとして知られている。北海道から九州にかけて分布するシコクママコナもトラマルハナバチやミヤママルハナバチが主要な訪花者であり、これらのハナバチ類が送粉を担っていると考えられている。ところが、紀伊半島南部の限られた地域に分布するオオママコナはこれらのハナバチの口吻よりもはるかに長い花筒を持っており、これまでの研究でオオママコナにはホウジャク類が訪花し、送粉を行っていることが明らかになってきた。ママコナ属ではこのほか、韓国南部のM. koreanumも同様な花形態となり、ママコナ属では複数の分類群でポリネーターシフトが起こっている可能性がある。
本研究では、オオママコナ生育地の訪花昆虫相を明らかにし、系統的に最も近縁と考えられる紀伊半島南部のシコクママコナと比較を行い、開花時期における訪花昆虫相の違いを明らかにした。その結果、シコクママコナ生育地ではトラマルハナバチが豊富に確認されたのに対して、オオママコナ生育地では開花時期である9月下旬から11月にかけて、トラマルハナバチをはじめとする長舌ハナバチ類が極めて少ないことが明らかになった。これらの結果からシコクママコナ近縁種間でのポリネーターシフトが起こった生態的な環境について考察を行う。