| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-173 (Poster presentation)

どの範囲の花密度が有効か:オオヤマオダマキにおける訪花量・種子生産・他殖への影響の違い

板垣智之, 安藤美咲, 小黒芳生, 酒井聡樹(東北大・院・生命)

植物の繁殖成功には複数の要因が影響する。花形質がポリネーターの誘引・受粉成功などに対して、また、集団内の開花時期・花密度やポリネーターの豊富さ・行動が近親交配などに対して影響すると考えられている。

本研究では、複数の要因について、繁殖成功への影響の強さを明らかにすることを目的とした。そのために、除雄処理を行い、自家受粉による種子生産への貢献と他家花粉獲得への干渉、およびこれらの影響が花密度によってどう異なるかを調べた。さらに除雄と袋掛けを合わせて行い、自家受粉および訪花回数を制限した場合の種子生産を調べた。材料は雄性先熟性・自家和合性多年生草本オオヤマオダマキで、調査は青森県の2ヶ所の自然集団で行った。繁殖成功として、処理個体および自然状態個体で、花あたり訪花回数、果実あたり種子数、果実ごとの他殖率、果実ごとの獲得花粉の遺伝的多様性を調べた。繁殖成功に影響しうる要因として、対象個体から近接他個体の雄期・雌期花数、花ごとの開花日、雌期開始日、および個体サイズを調べた。

その結果、花あたり訪花回数に対して、近距離の花数の強い影響が見られた。自然状態の種子数に対して、近接花数の影響は強くなく、一方で個体サイズ、各花の開花日は強い影響があった。しかし、除雄処理花の種子数に対して、近距離の花粉提供花の強い影響が見られた。これらのことから、自然状態では自家花粉が多くの種子生産に必要と考えられる。一方で、果実ごとの他殖率および獲得花粉の多様性に対して、近接花数の影響は見られなかった。期待としては近距離に花粉提供花が多いと他殖しやすく花粉親も多様になると考えたが、周囲の花密度の効果は強くないのかもしれない。


日本生態学会